ニュースの概要
Linxon、日立エナジー(Hitachi Energy)、FTC Solarの3社は、北米および今後合意する地域において、大規模太陽光発電と蓄電池(BESS)を組み合わせた案件を共同で開発・提供するための覚書(MoU)を締結したと発表した。Linxonは変電所建設を主とするEPC(設計・調達・建設)企業、日立エナジーは送配電機器大手、FTC Solarは太陽光パネルの角度を追尾する架台メーカーである。3社が役割を分担することで、太陽光発電設備と蓄電池、系統接続設備を一体で提案できる体制を整える狙いがある。再生可能エネルギーの出力変動を蓄電池で吸収しつつ、系統への接続をスムーズにする案件形成の動きとして注目される。
引用元: Linxon、Hitachi Energy、FTC Solarが北米向け太陽光・蓄電池案件で提携(Yahoo Finance / GlobeNewswire)
分析・見解
なぜ今、EPCと送配電と架台メーカーが手を組むのか
太陽光発電所を建てる会社(EPC=設計・調達・建設を請け負う企業)であるLinxon、送配電設備大手の日立エナジー、そして太陽光パネルを太陽の動きに合わせて傾ける追尾架台のメーカーであるFTC Solarという、性質の異なる3社が組んだ点が今回の提携の見どころだ。これまでこの3つの機能は別々の会社が担い、発電事業者が個別に発注先をまとめる形が一般的だった。異なる専門性を持つ企業が最初から一体で案件を提案することで、発注者側の調整コストを減らし、着工までの期間を短縮できる可能性がある。
系統への接続待ちを解消する狙いが透ける
北米では、新しい発電設備を電力網につなぐための審査(系統連系=電力会社による接続許可の手続き)に数年単位の順番待ちが生じている地域が少なくない。太陽光や風力は発電量が天候に左右されるため、電力網を管理する事業者は接続を認める際に慎重にならざるを得ない。ここに蓄電池を組み合わせれば、発電量が多い時間帯に電気を貯めて、少ない時間帯に放出できるため、電力網への負荷を平準化しやすくなる。日立エナジーが持つ変電・送配電の技術と、蓄電池を含めた一体設計を組み合わせることで、審査を通りやすい案件を最初から設計できる点が、今回の提携の実質的な狙いだろう。
蓄電池併設は「オプション」から「標準仕様」へ変わりつつある
数年前まで、太陽光発電所への蓄電池併設は収益性を高めるための追加投資という位置づけだった。しかし出力の変動への懸念が強まるにつれ、蓄電池を併設しない太陽光案件は接続審査で不利になったり、発電した電気を長期で買い取ってもらう契約(PPA)自体が成立しにくくなったりする状況が北米で広がりつつある。今回のように、EPCと送配電、架台という異なる領域の企業が「太陽光+蓄電池」をセットで提案する体制を作ったこと自体が、業界の標準がすでに一体型へ移っていることを裏付けている。
縦割り発注が残る日本市場にとっての示唆
日本国内では、太陽光発電所の建設と蓄電池の導入、系統への接続申請がそれぞれ別の事業者・別の契約で進むことが多く、北米のような一体提案の動きはまだ限定的だ。再生可能エネルギーを主力の電源に育てるうえで、発電した電気を無駄にする出力制御(発電量を抑える措置)の増加が課題になっている日本こそ、こうした一体型のパッケージが有効に働く可能性がある。今回の提携は北米向けだが、同様の座組みが日本の商流にどう波及するかを注視する価値がある。
ビジネスへの影響
発注者は「個別発注」から「一括調達」への切り替えを検討すべき
太陽光発電事業へ投資・開発を担う企業にとって、今回の提携は調達方式そのものを見直す契機になる。EPC、送配電、架台をまとめて発注できる体制が北米で整い始めた以上、国内でも同様のワンストップ型提案を行う企業連合が今後現れる可能性が高い。設備メーカーや商社は、単体の製品供給にとどまらず、系統接続や蓄電池運用まで含めた提案力を持つ企業との連携を早めに検討する価値がある。
国内で備えるべきは「出力制御に強い設計」の提案力
日本国内で太陽光・蓄電池関連の事業に携わる企業は、系統接続の審査を通りやすい設計をあらかじめ提示できるかどうかが、案件獲得の分かれ目になりつつある。北米の事例が示すのは、蓄電池を後付けの選択肢ではなく最初から織り込んだ設計を提案できる企業が、発注者から選ばれるという流れだ。EPCや架台メーカーは、単独での価格競争ではなく、送配電事業者や蓄電池メーカーとの提携によって提案の幅を広げることが、今後の受注競争を左右するだろう。
投資家が見るべきは提携が実際の受注につながるかどうか
MoU(覚書)の段階では、まだ法的拘束力のある契約には至っていない点に注意が必要だ。太陽光・蓄電池関連の企業に投資する際は、今回のような提携発表そのものよりも、そこから具体的な受注や着工がどれだけ生まれるかを追いかける方が実務的な判断材料になる。